わかりやすい話の極意

 自分は人にわかりやすく話をしたり、わかりやすい文章を書くことが非常に苦手という意識を持っている。だから、よく「日経アソシエ」を代表とする「仕事術でウハウハ」系雑誌でわかりやすい表現術の特集があると思わず手に取ってしまう。そのような記事で書かれていることは確かに否定するようなことは書いていない。実際、わかりやすい話や分かりやすい文章は記事に書かれているような特徴を守っている気がする。しかし、これらの記事を読んだからといって、次の日からわかりやすい表現ができるようになるかというとあまりそんなことはない。なぜか。
 自分自身の切実な悩みなので、あれこれ考えていたが、ようやく自分におけるこの問題の原因がわかった。それは、「わかりやすい表現術がどうのというより、そもそも相手に何が伝わってほしいか本人が理解していないか、もしくは伝えたいものは存在していない」ということだ。
「わかりやすい表現」は、自分が'相手がこのように理解してほしいと思う内容として、相手に何事かを伝えるという目的に必要な単なる技術手段である。だから、どんなにわかりやすい表現術を身につけても、もともと自分が相手に理解してほしいと思う内容が明確でなければ、いくらわかりやすい表現を用いてそれを相手に伝えても、当然だが相手には伝わらない。 自分の場合、わかりやすい表現に問題があるのでなく、相手に伝わってほしいものが何なのかについて深慮せずに話すのでわかりにくいのだ。これは自分の伝えようとしている概念について自分自身が理解不足である場合と、相手の頭の中の知識状態を考えず自分と同じと考えて伝えようとする場合とどっちもある。前者は上司とか同僚に新しいアイデアやしたい事を説明・議論する時、後者は後輩や上司に何らかのお願いをする時などに多発する。
 今後はこのことに気をつけていかねばなあ。