~ 自動運転の実現は、わたしに言わせれば30年「も」かかってしまった

~ 自動運転の実現は、わたしに言わせれば30年「も」かかってしまった

やってみたからこそわかる、ということは多いんです。イノヴェイションは、「アイデア」と「実現可能性」、その「社会的価値」という三角形がうまく形づくれたときに起きる。人間は神様じゃないんだから、試さなければ分かりませんよ。やってみる勇気が大事ですね。こういうことが起きればいいな、という希望=「アイデア」を、「実現可能性」と「社会的価値」も合わせて周囲を巻き込む魅力的なストーリーとして語り、実現していくことができるのが優れた科学者・技術者であるわけです。

秘訣というほどのものではないですが、先ほど述べた魅力的な「ストーリー」を、一方的に押し付けるのではなく、さも説得される相手側が考えたように思わせる、ということですね。面白い「アイデア」に基づいた研究開発の「ストーリー」を伝えるとき、「なるほど、だとしたらこんなことができるかな」とか、「本当だろうか、話のこの部分に問題がある気がするが、こうしたらもっと良くなるんではないだろうか」といったふうに、相手に発想や提案をわき起こさせる。その時点で、わたしの「ストーリー」はわたしのものではなく、相手の「ストーリー」になります。こうなれば、ほぼ勝ちのようなものですよ(笑)。

わたしは技術の基礎理論の進化論と言っているのですが、重要な応用や問題などに対して、手探りで築いた能力や解法を説明するのが「ヴァージョン0」。その意義をより発展させたり、もっと広範に役立つ理論に進化させるのが「ヴァージョン1」。そして、ヴァージョン1の理論の部分的な仮定や条件を変えていくだけの活動が「ヴァージョン2」です。

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