バランススコアカード戦略マップについて考える(1)

エクセグランの抜けたきれいな頭で思ったことを。

バランススコアカードという企業戦略策定フレームワークについて、必要に迫られて考えてます。オススメされたのはこの本。

 というわけで、「IT戦略デザイン」なる本を半分ぐらい付け焼刃的に読んでみました。私が特に知りたかったのは「BSC戦略マップ」の作り方で、それに関係する部分を読んでみました。で、読んでいった結果、自分はもしかしたら「BSC戦略マップ」の根本的な存在理由を大きく勘違いしていたのではないかという疑念にとらわれた。私の「BSC戦略マップ」に持っていたイメージは、要するに「ゴールまでの実施事項とその順序関係を整理したグラフ」つまり「ゴール到達すごろく」。だから、KPIは、ゴールに到達しない場合のボトルネックを把握するために、途中途中の実施事項の進捗状態を測定するための代表特性メトリクスとして存在するものであると思っていたわけだ。
 そういう考えでこの本を読み解くと何か違う。違和感を感じたのは以下の四つの点。

  1. 4つの視点の存在価値は何なのか。この時点での理解では、実施項目のブレイクダウンを網羅的に実施するガイドのためのテンプレート的視点ということなのだが何か違う。どうも雰囲気的にはKPIを利用し定量的に実施項目の達成度を評価して、この4つの視点で整理し、それらを線形に組み合わせて全体的な戦略達成状態の定量化指標として用いるらしいこと。違和感その4にもつながるが、なんでそんなことするんだろうか?
  2. なぜマップであってグラフでないのか。だって、ゴール到達すごろくの側面が強調されるなら、実施項目のノードと関連のエッジが重要であり、つまり基礎モデルはグラフ(ノードの関連のみに意味がある)だろう。だから「BSC戦略グラフ」と呼ぶべきだ。マップである(=何らかの位置関係に意味がある)というのは、4つの視点のどこにノードが存在しているかという点を強調しているとしか思えない。しかし、4つの視点は、「どのようなノードが存在するか」を考える時の網羅的な思考の支援には役に立つが、すごろくに落ちてしまえば、もう用なしのはずだ。なのに、なぜマップ的側面が強調されるのか。
  3. 矢印は因果関係であって順序関係ではないらしい。なぜだ。すごろく的側面で捉えれば、実施項目の順序関係が重要である。しかし、サンプルとか見ても順序関係というよりは因果関係であるし、そうすべしと書いてある。さらにいえば下位二層のノード間の関係は、もはや[手段]->[目的]的な側面があって、グラフの有向順序でやっていけば良いという感じではない。なんで?
  4. もっとも大きかった違和感がこれ。「バランスのある」目標設定とあるが、なぜバランスが必要なのか、そもそもバランスの取れた状態というのは何なのか。というのも、結局、企業の究極的な目的は利益の確保であって、他の目標はその目的に対して従属的であるはずである。財務的な視点にのみとらわれてなぜ悪い。なのに、なぜバランスが強調されるのか。バランストって形容詞があるからなのか。そんなわけないよな。

 で、個人的な納得間のあった回答は、「BSC戦略マップはすごろくじゃない」ということ。つまり、すごろくの終点(おそらく通常は財務的視点のノード)を目指すという考えがものすごく間違えなのではないか。むしろ、短絡的な財務視点ゴール一直線の反省から生まれたのが「BSC戦略マップ」なのではないか。あーそうか、バランスって言葉は、バランス良くとかっていう意味よりは、貸借対照表のバランスから来ているのかもね、ということ。違うかもしれないけど。

今日のまとめ
◆ 「BSC戦略マップ」って目標に向けた実施項目の実行順序の可視化を目的としたものではないと思うのだけどどうなんだろうか。けど、自分も含めて、そう誤解している人は多いのではないか。

      • -

こっから、「BSC戦略マップ」の本質的な存在理由の自分の思いつきの話が続くのだが、よく考えると、まだ紹介いただいた「IT戦略デザイン」を半分も読んでないし、他のBSCの本を読んでいるわけでもない。そこに答えがあるに違いない。っていうか、当たり前の結論を車輪の再発明しようとしている悪寒がする。まあいいか。それより、今最も気になっているのは「バランスト」スコアカードなのか「バランス」スコアカードなのか、どっちなんだよということであったりするのだ。

(明日に続く)