論文の型


海外の学会などに行くと,下っ端の私は,マイルの代償に報告書を書く.これが結構大変.個々の論文のおおよその内容を,理解しなくてはならないためである.(聞いていれば問題ないという噂もあるが,まあ英語なんかなに言っているかあまりわからないし,パラレルセッションは聞いてないしね)

で,分厚いProceedingsを読む必要があって,とにかく大量に読まなくてはならない.

そのとき「いかに素早く上っ面を理解するか」がポイントになる.で,とにかく急いで読むとするとおおかた以下のようになる.

1. Abstractの「In this paper」や「This paper」を探してその段落を読む.これで「何をしたか」について端的に理解する.
2. Introductionの一,二段落目を読んで,どのようなドメインを背景として仮定しているか知る
3. Introductionの真ん中当たりを読む. そのあたりには,そのドメインで生じる「この論文が注目した解くべき」問題と「関連研究がその問題を解決してない」ということが書いてある. これで,この論文が今から解決しようとする問題の「なぜやるべきか」「新しいのか」を理解する.そして,その問題は「解くべき価値あんのか」を値踏みする.
4. Introductionの「この論文の構成は以下のようである,なんちゃらかんちゃら」の前の段落を読んで,この論文の「問題解決の着眼点」をつかむ
5. (必要なら)2,3章当たりから着眼点を深堀する.(大概2章は必要な言葉の説明,3章は着眼点自身が書いてある)
6. ここまでで,おおよその論文の骨格が見えるので,論文全体の図をナナメ見して,もう少し詳細の内容をつかむ
7. (興味があれば)適当に章タイトルを見て,さらなる詳細をつかむ
8. 評価はナナメに眺めて,議論はしっかり読んで,この論文の問題の「解くべきあんのか」と「着眼点の価値」を値踏みする.
9. (価値がわからなかったら) Conclusionを読んで,筆者が最も主張する「価値」を見て,改めて「価値」を好意的に見直す.
10. ヘー.すげー. or なんじゃこりゃ.
でおしまい.

そんなに興味のない論文も含んでいる場合に,それらを大量に読もうとすると,上のようにパターン化して読む必要がある. もしこれに沿わないとわかりにくいったらありゃしない.

興味のない論文を大量に読む人って誰だ.レビュアだ. なので,論文の書き方の型をつかむ+その型を守るってのは重要だなと痛感した.(特に守る必要性を軽視していた)

こんなの大学の人ならあたりまえなんだろうけど,ようやくわかりました.はい.

その他いらつくこと

  • 論文を理解する上でのキーと成る単語の説明がない
  • 図表を理解するのに本文の相当の理解が必要(っていうか図表は本文を直感的にりかいさせるものなのに逆)
  • 図の絵の使い方が適当(典型的なのが矢印の使い方があいまい)
  • 数式や擬似コードが,意味的に間違っている.矛盾している.
  • 数式や擬似コードを,自分で決めた勝手な書式で表現している
  • 章,節タイトルと中身が合ってない
  • 段落の頭が,段落のサマリになってない
  • Introductionでの問題設定とConclusionで解決した問題が違う
  • 重要なRefが有料
  • ものすごく断片的なコード例
  • なんだかよくわからないが2カラム分取っているアーキテクチャ

書けば書くほど自分に思い当たる節続出.自分にも役に立つな.