紹介状のお値段

そんなわけで、明日からベルリンに出張なのであるが、向こうで癲癇の発作が起こったらいろいろ面倒なので、その際に向こうの医者があわてないように症状を描写する内容を紹介状の形式でお医者さんに書いてもらうことにした。英語で言うとたぶん、"Certified Diagnosis"というものであろう。3日ぐらいかかるってのでいうので、待って今日病院にいってもらいました。
で、別に中を見るなとかも言われていないので中をあけてびっくり。要するに

  • Diagonosis: Epilepsy
  • Prescription: sodium valproate 200mg x 4 per day
  • Ceritified by Dr. XX

てあるだけ。別にこれだけかよ!ってことにつっこみたいわけでもない。確かに、上記情報ならインターネットがあれば10分で書ける。重要なのは医者の免許をもらった人が"Certified"した内容であるということであろう。しいて言えば、これだけ書いておけばドイツの医者も困らないだろう(本当かどうか知らんが)という判断は、俺にできないので、医者の持つ付加価値が思う存分発揮されたというべきか。しかし、さすがにびっくらこいたのは、この紹介状のお値段\10,500(消費税込み)だったということである。手数料ぐらいの値段と思ったら牛丼約30杯分である。そんなーという感じであった。
 とはいえ、学ぶべきは、この値段の妥当性を、俺がインターネットで10分で調べてワードを使って書いたものと比較して高いとか低いとか言ってはいけないということである。まず一点目は、おそらく経済学の需要と供給曲線をちゃんと勉強していればわかるんだろうけど*1、この値段をとっても、それを書いてもらいたい人がいる限り、その値段がついているということであり、納得せざる得ないのだろう。そして、二点目。なんでこんな値段を病院側が提示できるのか、実際この値段を出せる根拠は何か。これを書いてくれた医者の時給か?確かに医者の時給は高いが10分で1万はしないであろう。じゃあ、紙代か?どうみても0.3円である。じゃあ、何?それは、ペタンと押してあった病院の公印であると思う。つまり、正月に寒い中、毎年のように箱根に行って帰ってくる人たちと関係するこの病院が、この内容を証明していることがこの値段を後押しする付加価値なのである。その付加価値の源泉は、もちろんこの病院が100年ぐらいずーっと人の病気を治してきた組織であるという信頼なわけだ。100年も人を治してきた組織が病気についてCertifyするんだから間違いはないだろう。その信頼である。
 その信頼をぐっと圧縮しアイコン化し、そのアイコン自身を「形容詞にする」ことによって、その組織の提供するあらゆるモノやサービスにそのアイコンをくっつけて付加価値として金にする、これが一般的にブランド戦略といわれるものであるのではと思う。だから、アイコンの価値を保ち続ける最大の秘訣はその基盤となる信頼だ。信頼が破壊されたときのブランド価値、それがいかにもろいものかは、不二家とかみればわかる。また、長い間アイコンの威力にあぐらをかいていると、そのアイコンはなぜお金になりえるのかということを忘れてしまった人たちに出会う。アイコンを維持するためにその基盤となる信頼を維持し続けること。それが大事なんだよ。実際は。とまあ、20万円もするティファニーの3連リングが原価5000円もしないらしいという脱力感から思った今日この頃でした。

*1:いまだに経済学の勉強は、経済学を学ぶ価値、経済学に登場するステークホルダ(市場とか家計とか企業とか)の説明、その間にやり取りされるもの(労働、財、金融資産だっけ?)と処理の説明のあたりまでしか進んでいないのでぜんぜん曲線までいかない